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02 ハイブリッド・ピッキング

カントリーらしい奏法

アルバート・リー
アルバート・リーら、多くの
カントリーギタリストが駆使する
ハイブリッド・ピッキング。
ハイブリッド・ピッキング 昔は、特に名前など聞かなかったのですが、最近ではこう呼ぶんですね。
カントリーギターでは、特にエレキ派の場合、フラットピッキングのみで弾く人は殆ど見かけません。
皆さん、大抵このハイブリッド・ピッキングで演奏しています。

従って、この前のページで、適正ピッキングをフラットピッキングとしているものでも、大抵ハイブリッドでいけます。

ざっくり言って、フラットピッキングは同じ弦を弾き続ける方が得意(難易度が低い)で、新しい弦が出てくるパターンはやりにくい(ストリングスキッピングとか、かなり練習しないと決められませんよね。)。
また、速弾きには向いていると言えます。
逆に、フィンガーピッキングでは、次々に新しい弦を弾くのが得意で、同じ弦を弾き続けるパターンは、不得意。
特に、同じ弦を弾き続ける速弾きなんかには、不向きと言えると思います。

ハイブリッド・ピッキングは、どちらでも問題無く弾く事ができます。

奏法の内容

ピッキングなので、右手の話です。
フラットピックを、親指と人差し指で挟むように持ったら、通常は全ての音を、そのピックで弦を弾いて演奏する事になります。
これを、ハイブリッド・ピッキングでは、余った指、中指、薬指、時には小指を使ってもピッキングしていきます。

そんなに便利なテクニックなら、皆それでやればいいのに、カントリー以外では一般的で無い気がします。

もちろん、理由があると思います。
・練習量が必要
大抵の初心者には、なじみの無いピッキングで、フラットピックだけでも十分練習が必要なのに、それをブれさせずに、他の指を自在に操るのは、かなりの練習が必要です。
カントリーの人たちは、田舎暮らしで暇だからできるのでしょうか(笑)。
・人差し指がふさがれる
フィンガーピッキング派にとっては、人差し指が使えない点が結構デメリット。
そのうえ、やっぱりサムピックの巻き付いている安定感に比べると、フラットピックを挟んで、他の指を動かしていくと、挟んだフラットピックがそれにつられて動いてしまう(逆も同じく)から、やりにくいのです。

・適した曲が無い
そもそも、フィンガーピッキングならフィンガーピッキング用の曲はたくさんあるでしょうけど、多くの練習を追加してまで、このハイブリッドピッキングでわざわざやる必要性のありそうな曲が、あまり無いのじゃないでしょうか。他のジャンルの事、良く知らないけど。

奏法の肝

フラットピッキングでは難しい、ロール系のリックも軽く弾きこなす事ができるこの奏法。
通常のフラットピッキングに加えて、右手中指、薬指もピッキングに使う。肝は、ただそれだけなんですが...。
難易度が高い!

基本的にロックで、ちょっと遊びでカントリーテイストを入れたいって位の方は、これに本気で取り組むと、結構時間を取られる事になると思いますので、別の事から手を付けた方が良いかも。
でも、これがちょっと出来るだけでも、カントリーのテクニックを知らない仲間うちからは羨望の眼差しを受ける事ができるかもしれません。

とにかく慣れる事が大事で、肝と言っても練習量しかないんじゃないかなぁ、この奏法に関しては。

練習用譜例

たぶん最初は単純なパターンからやった方が良いので、ロールのパターンでやると良いと思います。

上段に左手の運指、下段に右手の指使いを記載してみました。
右手側のFPは、フラットピックです。

バックワード・ロール(Backward Roll -1-)
左手
AA
1
275757
36666
47777
5
6
右手FPFPFPFP

左手
E
1
275757
37777
46666
5
6
右手FPFPFPFP


フォワード・ロール(Forward Roll -1-)
左手
AA
1
275757
366666
477777
5
6
右手FPFPFPFPFP

左手
E
1
275757
377777
466666
5
6
右手FPFPFPFPFP
これだけでも、全くやった事が無い方は、詰まったりすると思います。
しかし。
ここまでのパターンだけなら、ファインがーピッキングでやればいい話。

こうしたパターンで慣れていったら、その後はもう少し複雑なものをやってみましょう。
例えばこんなの。
左手
10000
266666
3-g-77777
4
5
6
右手FPFPFPFPFP

左手
1003
266100
3-g-7772-h-300
4
5
6
右手FPFPFPFPFPFP

左手
10
2331
3-g-44432-p-002
42-p-0
5
6
右手FPFPFPFPFP

左手中-人-
13
200
3-h-3000
4-s-553-2-0
└3┘*
0
5202
633
右手FPFPFPFPFPFPFP

*pulling off

うさん臭いフレーズですね。
ポイントとしては、以下かなと思います。
  1. 1.入りがグリッサンド
    (どアタマ)
    ロール的なパターンのフレーズは、裏拍から入ると難易度が上がりますね。
    でも、この譜例では、それほど難しくないと思います。

  2. 2.ロールパターンからの抜け
    ロールパターンからの抜けが、どこからかというのは意識しておくとフレーズが手になじむまでの時間を短くできると思います。
    2-1(2段目の後半)
    まず一か所目が、2段目の2小節目。
    2音ほどは、そこまでと同じパターンで右手が動きますが、左手がポジションチェンジする事に合わせて、ロールパターンは、小節が変わった、ちょうどその部分で切り替わったと考えてもいいですし、右手が同じパターンのまま動き続ける2音分までがロールパターンと考えても良いと思います。
    これは、場面場面でどちらも使えるように鍛え上げておく事が必要.........だと思います。きっと。(←歯切れが悪い。)
    また、ロールのパターンはフィンガーピッキング的な演奏で、そこから抜けた後、フラットピッキング的な演奏に入る事も多いので、そこでカチっとスイッチでも入れるように切り替えられるのが理想です。
    通常のフラットピッキングから、指も使った演奏に切り替える事や、その逆も含めて習得して、自在に切り替えられるようになって初めてこれをホントにモノにしたと言えます!
    いや、言えるんじゃないかな。たぶん。(←またしても歯切れが悪い。)


練習方法

まずは、譜例部分に書いたように、ロールのような右手側が単純なパターンで慣れると良いと思います。
その後は、ギャロッピングなどのフィンガーピッキングの曲をハイブリッドピッキングで演奏してみるという練習をするのも良いと思います。
予め、ハイブリッドピッキング用に作られたフレージングをしていないフレーズを弾く事で、逆に練習になるという方法です。
いずれにしても、ちゃんとこのスタイルをものにするなら、おそらくかなりの練習量が必要だと思いますので、多くの例を見聞きして研究する必要がありそうです。

幸いにして、カントリーの世界では、良い例が豊富にあるので、その点は心配ありません。
いきなり難易度が高いでしょうけど。

この奏法を聴くには

【弾く】(DVD)カントリー・レジェンド/アルバート リー (Albert Lee)

種別イメージ
アルバート・リーの教則モノ。
“弾く”とは書いたものの、この人のPlayは真似できません...。 ともあれ、アルバート・リーは、基本的に全てこのハイブリッド・ピッキングのスタイル。
あれだけのテンポで次々にアイディアが出てくるうえに、演奏がこのピッキング。
頭の中で何を考えているのでしょうか。

【観る】(DVD)Live at Sheldon Concert Hall

種別イメージ
これは、ハイブリッド・ピッキングがどうとかでなく、お勧めな一品です。
ハイブリッド・ピッキングは、「Mombasa」など幾つかの曲で見られますが、彼の場合はよりフィンガーピッキング寄りなスタイルなので、このページで期待されるものとは違うかもしれませんね。
でも、これを見ていると「この曲、なんでサムピックで弾かないのかな?」と思う位の曲を、見事に弾いていたりして、これはこれで見ものです。

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